官浪の文房具雑学~電卓編~

世界初の電子式卓上計算機(電卓)が誕生してから、今年で50周年を迎えました。それまでの「そろばん」にとって代わる、簡単な操作で瞬時に計算できる電卓は、世界市場を大きく揺るがし累計生産台数は6億5千万台を超えるといいます。家電メーカーのシャープが電卓の開発を始めたのは1960年代。この頃の計算機は機械式で、音がうるさく、答えが出るまでに時間がかかっていました。シャープの研究者は、1964年にトランジスタを使用することで静かで瞬時に答えが出る世界初のトランジスタ計算機「CS-10A」の開発に成功しました。重量は25Kgと重く、価格も53万5千円と非常に高価なものでありました。一般市場に普及させるには、小型化し、価格を抑えるために集積回路(IC)を搭載する必要があり、シャープとカシオの技術競争、シェア争いが激化していきました。1972年にはカシオ計算機が12,800円という破格の電卓「カシオミニ」を発売し、シェアを奪いました。「答え一発、カシオミニ」のCMも功を奏し、爆発的なヒット商品となりました。翌年、シャープがCOS-LCDを活用し、単3電池1本で100時間も使用できる「EL-805」を発売。そして1975年には厚さ9mmの手帳型電卓「EL-8010」を発売、翌年太陽電池を搭載した「EL-8026」を発売した後、液晶技術をもとに薄型化競争は激化し、カシオは名刺サイズミニカード「LC78」を発売。暑さ3.9mmで爆発的なブームを巻き起こしました。1983年には0.8mm厚のカード電卓の発売を最後に、小型化は終止符を打ちました。その後、各社は時計付きやゲーム付きという複合電卓の開発に力を注ぎました。しかし、80年代後半からは中国企業が安く製造するようになり、100円ショップでも売られるなど電卓はもはや魅力のある商品ではなくなりました。この50年間に亘る電卓競争の努力を生かし、これから先の人々に受け入れられる新しい電卓が登場することを期待しています。

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