官浪の文房具雑学~ゲルインクボールペン編~

ボールペンは、大きく分けて油性と水性の2種類に分類されます。ボールペンのインクは溶剤に色を出す色素を加えて作られるのですが、溶剤が水の場合は水性、油の場合は油性ということになります。油性は揮発性が低く、滲みが少なく裏うつりもしない、また筆記距離が長いなどの利点がありますが、書き味が重いや書き出しのかすれやボテが起こる欠点もあります。一方の水性はさらさらした書き味が特徴ですが、筆記距離が短いことや水に濡れるとインクが流れて文字が消えるなどの難があります。ボールペンは1943年ハンガリーのラディスラオ・ピロによって発明されました。この発明から長らくは油性でしたが、1980年にさらさらした書き味の水性ボールペンが発売され、ブームになりました。しかし、耐水性に問題があることから各メーカーが研究を重ね、1984年に「水性と油性のメリットを併せ持つ」というゲルインクを採用した「ボールサイン」をサクラクレパスが開発しました。ゲルインク(ゼブラではジェルインクという)とは、ゲル化剤を加えて粘度を増した水をベースにした水性インクのことです。このインクはリフィル内部では高粘度のゲル状ですが、ボールが回転することにより粘度の低いゲル状になるという「チキソトロピー」という現象をインクで開発することに成功しました。これにより書き味は滑らかで、紙に定着すると再び粘度が増すために滲みにくい。また比較的大きな粒子を使いやすいという特徴があり、パステルカラーやラメ入りインク、香り付きインクなどのボールペンも製造が可能になりました。速乾性に優れたぺんてるの「エナージェル」、鮮やかな発色が特徴のゼブラ「サラサクリップ」は全51色とバリエーションが豊富です。インクの増粘材に植物由来の次世代素材「セルロースナノファイバー」を搭載した三菱鉛筆の「ユニボールシグノ」、バイオポリマーインキを採用した滲みにくく極細の文字が鮮明なパイロット「ハイテックC」など各社から優れたゲルインクボールペンが発売され。今ではボールペンの主流になりました。




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