官浪の文房具雑学~水平開きノート編~
通常のノートは、開いた時に中央部分が膨らんで、中央部分への文字や図などの書き込みができない、という欠点があります。そんな悩みを解決したのが、中村印刷所が2014年に発売した「水平開きノート」。通称「おじいちゃんのノート」とも呼ばれています。このノートはどの部分でも180度水平に開きます。そのため、見開き2ページを1枚のノートとして使用することができます。また、コピーやスキャンする時に中央部分に影が映ることもないという利点があります。このノートを開発した中村印刷所は1938年創業の家族経営で、伝票印刷を中心とした印刷業の町工場。しかし2010年頃から経営が悪化し、再起をかけてオリジナル商品の販売に取り組むこととし、ノートに着目。水平に開くノートの開発を始めましたが、機械への投資も1000万円ほどを費やし、試行錯誤の連続であったらしいです。接着の工程が最も重要で、最適な接着剤を見つけ出すことが最大の課題でした。2年間にわたる開発の結果、水平に開き、強度にも優れたノートが完成しました。2015年にはその水平開きノートの製本技術を「ナカプリバイン」(ナカムラ・プリンティング・バインダー)と名付け特許を取得しました。ノートの評判は上々だったのですが、知名度・実績もないために販路は広がらず、8000冊もの在庫を抱えることとなりました。困り果てた元製本会社の経営者だった社員が孫に、友達にあげてくれ!とノートを手渡したところ、孫は「私のおじいちゃんが作った素晴らしいノート、宣伝費が無いから宣伝できない・・」とツイッターでつぶやき、ノートの紹介をしたところ大きな反響を呼び、購入を希望する声が多数寄せられた。またテレビや新聞にも取り上げられ、一躍大人気商品となりました。その後、「ジャポニカ学習帳」で有名なショウワノートとの間で小学生向けノートの製造・販売する契約を締結し、2017年にショウワノートは「水平開きノート」の名前で販売を開始しました。この水平開きノートは、私も愛用しています。