官浪の文房具雑学~ガラスペン編~
4~5年ほど前から、文具好き女性の間で「インク沼」と呼ばれる「沼」にはまる人が増えてきました。インク集めの歓びにハマってしまうという、そこはまさに底なし沼のような奥深い世界が広がっています。文具博や展示会などで、たくさんの種類のインクを試筆できることも多く、自分の理想のオリジナルインクを求める人も多くいます。万年筆でもコンバータを使用すれば、いろんな色のインクで試せるのですが、いちいち洗浄する必要があります。いろんな色のインクで書きたい時におすすめなのが、ガラスペンです。ガラスペンは、ペン先に直接インクを付けて書く「つけペン」の一種です。インクの色を変えたい時は水で洗い、やわらかい布等で拭けば、次々といろんな色に変えることができます。ガラスペンは、毛細管現象を利用した筆記具で、ペン先の溝にインクが吸いあがり、1度インクを付けると、はがき1枚程度は書くことができます。ペン先が紙に触れた時点でインクが紙へと流れていくので、筆圧は必要ありません。ガラスペンの魅力は、メーカーを問わずどこのインクを使用してもペン先を傷めることがないことです。染料インク、顔料インクそして古典インクも使用できます。古典インクは万年筆のような金属製のペン先に接触させると、ペン先を腐食させてしまうということがあります。ガラスペンのペン先はガラス製ですので、酸に対して強く腐食することはありません。ガラスペンは透明感のある美しさで、書き味も良くお手入れも簡単なため、人気の筆記具アイテムとなっています。このオシャレなガラスペンはヨーロッパが発祥かと思っていましたが、なんとその発祥は日本で、明治35年に風鈴職人の佐々木定次郎氏によって開発されたものらしいです。当初は竹や木の軸にガラスのペン先を付けたものが普及していましたが、平成に入ってから軸とペン先が一体化した全体がガラス製のものが誕生し、軸のねじれ装飾が美しい工芸品ともなり、人気を集めています。ガラスペンはガラス職人による手作りが多かったのですが、最近は多くの文具メーカーからも発売されています。また、ガラスペンでなぞる『ツキアカリ商店街』という「書く」を愉しむ本もベストセラーになっています。