官浪の文房具雑学~不易糊工業株式会社編~
「フエキくん」でお馴染みの不易糊工業。その歴史は古く、今から137年前の1886年に、前身である足立商店として創業されました。その9年後の1895年に、日本で初めてとなる腐らないデンプン糊「不易糊」が誕生しました。その当時は米のデンプンを使った糊でしたが、腐ってしまうという難点がありました。そこで足立商店は防腐のために、ホルマリンを入れて商品化されました。「不易」とは中国の荀子の「萬世不能易也(永遠に変わることなし)」に因んで命名されたようです。いつまでも腐らず不変の品質を誇るという意味が込められています。不易糊は、その後も改良を繰り返し、容器をガラス瓶からプラスチックに変えて売られ続けました。終戦後、国の教育政策により、世の中が学校教育に力を入れるようになったことにより、学校への納品が増加し、でんぷん糊が定着していきました。1975年に「かわいい容器で楽しい工作」のコンセプトで『フエキ糊どうぶつシリーズ』を発売。第2次ベビーブームにより子どもの数が増えていた時期でもあり、子ども向けの文房具が各メーカーから発売されました。使い終わった容器が、貯金箱などに再利用できることで、園児や学童に大好評となりました。この時はウサギと象、犬という3匹のシリーズで売られていましたが、ウサギと象はあまり人気がなく、唯一生き残った「犬」が定番品となり、2008年には栄誉ある「フエキくん」の名前が与えられ、キャラクター化されました。同年に、この容器を使った化粧品「なかよしハンドクリーム」を発売し、女子学生やOLに人気が殺到し、大ヒット。その後は、他の企業とのライセンス契約で展開され、お菓子やおもちゃ、食品など数々のフエキくんグッズが人気を集めています。「どうぶつのり」は、発売当初からのロングセラー文房具になっています。主原料にとうもろこしでんぷん100%にこだわり、子どもたちが安心して使用できることが永く愛用される要因です。また、これ以外にも天然原料から生まれた、しわになりにくい新タイプの液状糊「しわにならない糊」も発売。紙や封筒の接着にしわになりにくく、キレイに貼れる糊として好評です。小学生のプリントをノートに貼り付ける用途から、同じ商品が「プリントがきれいに貼れるのり」という名称で販売されています。先日、不易糊工業(株)本社を訪問させていただき、企画開発室の山口さんから貴重なお話を伺うことができました。創業137年の老舗企業 不易糊工業さんの益々のご発展をお祈りいたします。