官浪の文房具雑学~フリクションボールペン編~
皆さん、「消せるボールペン」をご存知でしょうか?そう!2006年に発売以来、世界で10億本も売れ続けているパイロットの「フリクションボールペン」です。書いた文字をペン先に付いているラバーで擦ると、その摩擦熱で筆跡が消えるという筆記具の常識を破った画期的なボールペンです。正確に言えば「消える」のではなく、インキが「無色透明」になっているのです。30年間にわたる開発研究で、このボールペンは誕生したそうです。1971年にこのフリクションボールの基礎ともなる、温度変化で色が変わる「メタモカラー」をパイロットの研究者が発見し、1975年に特許を取得しました。この研究者は夏までは緑色の葉が、秋が深まると真っ赤に紅葉する景色を見て、色が変化するインキ開発のヒントにしたといいます。このメタモインキは、熱いお湯を注ぐと色が変わり絵柄が変化するコップや玩具などにも広く使われ、多くのヒット商品が発売されました。しかし、このインキを使った実用性のある筆記具を作りたい、と研究に研究を重ね1988年に透明化して色が消える状態を記憶するメモリータイプのメタモカラーを実用化しました。2002年に黒インクが擦ると赤やピンクに変色するペン「イルュージョン」を発売しましたが、変色温度幅が0度~40度と狭く、おもちゃ的な感覚であったため、ヒットには至らなかった。実用性のあるボールペンを作るには、ラバーで擦ると透明(消える)になることと、変色温度幅を-20度~65度にすることを目指して研究を続け、2005年に「フリクションボール」の製品化に成功しました。当初は「消す」文化のあるフランスやドイツなどのヨーロッパで先行発売され、大ヒットしました。その後、2007年に日本国内発売を開始し、日本でも大ヒット商品となりました。学生の学習、ビジネスマンは手帳に書き込んだ予定の変更に、また地図や図面の書き込み、校正などに多く活用されるようになりました。その後、消せる蛍光ペン「フリクションライト」やカラーペン、色鉛筆など次々に発売し、いずれも大ヒット商品となっています。
(参考文献:滝田誠一郎著「消せるボールペン」30年の開発物語)