官浪の文房具雑学~朱肉編~
西暦57年、後漢王朝から日本に与えられたという「漢委奴国王」の金印。これが現存する日本最古の印章だそうです。その印を捺す時、朱肉として何を使用していたのでしょう。現在のように朱肉のない時代には泥を使っていたようです。朱肉のことを「朱泥」とも呼ばれるのはその名残です。朱肉は中国の南北朝時代に使用されていたとの文献があります。日本には仏教の伝来とともに渡来し、奈良時代に官印として使用されるようになりました。江戸時代には武士階級にのみ朱肉が許され、庶民は黒い朱肉を使っていました。朱色は縁起が良く、魔除けの色とも言われています。明治初期には太政官布告令により、署名捺印にて正式書類とする印鑑条例が発令されてからは、その必要性から製造されるようになりました。本来、朱肉とは水銀から作られるもののことをいいます。辰砂と呼ばれる石の中の硫化水銀、松脂、ロウ、ひまし油などを混ぜ合わせ練り上げたものが朱肉というらしいです。朱肉には「練り朱肉」と「スポンジ朱肉」があります。練り朱肉は銀朱にひまし油、木蝋、松脂を溶かして、和紙を加えて練り固めたもので、高級な容器に入れられた重厚感が特徴です。色合いや捺した風合いに深みがあり、印影がくっきりはっきりと鮮明に捺せ、長期にわたって保存することができます。大切な契約の場面で使用されることが多く、官庁や多くの企業でも練り朱肉を用いています。一方のスポンジ朱肉は、顔料、植物油・合成樹脂を混ぜてインキ状にしたものを、フエルトやスポンジに染み込ませたものです。安価で使い勝手がいいということで、一般的に家庭や会社等で使われている黒く丸いケースの朱肉です。スポンジ朱肉はスポンジに朱肉が染みていて、すぐ簡単に捺印でき、また押した後すぐ乾く。そして、補充インクを足すだけでメンテナンスが手軽にできる。などのメリットがあり広く使用されています。乾燥時間が約3秒で、印影クッキリという「速乾シヤチハタ朱肉」はビジネスでの使いやすさを高めた、ハイクオリティの朱肉です。また、朱肉のフタが印マットとして使える、印マット付朱肉のシヤチハタ「シクオス」も人気があります。私のおすすめは、マックス「瞬乾朱肉プレミオ デザイン朱肉」。約3秒で乾く朱肉で、ケースに漆調の塗装を施し、箔押しをした高級感溢れるデザインの朱肉です。そっとカバンに忍ばせ契約時に取り出せば、ビジネスマンとしての価値も上がります。