官浪の文房具雑学~大人の鉛筆編~
子どもの頃によく使った鉛筆の感覚を思い出させる、鉛筆好きの人のための筆記具『大人の鉛筆』。鉛筆好きの私にとっては思わず欲しくなるネーミングです。この「大人の鉛筆」を製造しているのは北星鉛筆。その前身は、1909年(明治42年) 北海道の水松(別名オンコ、イチイ)の木で鉛筆用材として板を作る杉谷木材として開業し、鉛筆用の板を全国に製造・販売されていたそうです。大正から昭和の戦前まで、地球鉛筆と並びトップを争っていた「月星鉛筆」の商標を持つ市川商店を買収して、1951年(昭和21年)に北星鉛筆株式会社として創業されました。創業以来、『鉛筆は、我が身を削って人の為になり、真中に芯の通った人間形成に役立つ立派で恥ずかしく無い職業だから、鉛筆のある限り、家業として続けられるように』という素晴らしい”鉛筆の精神”が代々受け継がれています。1953年(昭和28年) オート・ボールペンの木軸を生産し、最盛期には250万本/ 月の出荷があったようです。当時は鉛筆の販売形態はダース売りが主流だったのですが、北星鉛筆はスーパーマーケットの伸長に伴い、3本入りの市場を作り上げたことでも話題となりました。そして、「大人の鉛筆」の元となった、削らない鉛筆「ノーカット鉛筆」を1954年(昭和29年) に発売。そして、2011年(平成23年) 鉛筆ならではの「書く楽しみ」を思い出してほしい・・・そんな想いから「ノーカット鉛筆」のコンセプトをそのままに、シャープペンの構造を持った「大人の鉛筆」が発売されました。木軸はアメリカ産の高級インセンス・シダー材を使用し、慣れ親しんだ鉛筆の感覚を再現し、高級国産の2mm芯は、不純物が少ない黒煙と粘土を均一に混ぜ合わせて作られ、折れにくい強さと、滑らかな書き心地が特徴です。2012年(平成24年)には、日本文具大賞デザイン部門優秀賞を受賞されました。そして、2022年(令和4年) 鉛筆を思わせるフォルムの「鉛筆屋のボールペンW」と「鉛筆屋のシャープペンW07」を発売し、大好評となっています。木の温もりは「懐かしさ」や「癒し」を感じますね。いつまでも残したい文化ともいえます。私も愛用しています。