官浪の文房具雑学~ジェットストリーム編~

年間の販売本数が世界で1億本以上という三菱鉛筆の油性ボールペン『ジェットストリーム』。軽く滑らかな書き心地と、はっきりとした濃い筆跡が特徴の超人気ボールペンです。1887年(明治20年)に創業した三菱鉛筆は、高級鉛筆「UNI」を中心とした鉛筆メーカーでしたが、鉛筆の需要が減少する中、ボールペンやシャープペンの開発にも力を入れました。1990年ころからスタンプ台の開発にも挑み、1994年油性顔料を使ったスタンプ台「HSPシリーズ」を売り出しました。この開発が後のジェットストリーム誕生に大きく関わっています。スタンプ台の開発から、油性ボールペンの開発に移った研究者の市川氏は「今までと違うもの、自分に使いやすいものを作ろう」と思い立ちました。書き味が重く、インクの乾きが遅いなど当時のボールペンの弱点を解消すべく試行錯誤を繰り返しました。当時の油性ボールペンはどれも同じ溶剤を使っていましたが、50~60種類の溶剤を試して、よりなめらかなものを見つけ出すことができました。また、発色を良くするために染料ではなく、溶剤に溶けずに小さな粒として残る顔料を使うことを思いつきました。スタンプ台の開発で研究した顔料のノウハウがここで生かされたともいえます。こうして出来上がったインクは、これまでにない、なめらかインクでした。インク以外でも「逆流防止機構」を採用するなどの工夫も施されました。そして、2003年に先行して海外でキャップ式のジェットストリームが発売されました。しかし、日本のボールペンの主流はノック式です。ノック式はペン先が常に空気に触れているため、インクが乾きやすいという難点がありました。そこでインクやペンの形状などを2年かけて再び研究し、2006年(平成18年)国内で発売となりました。そのジェットストリームは瞬く間に大ヒット商品となりました。このボールペンの出現により、筆記具各メーカーから相次いで「低粘度油性ボールペン」が発売され、なめらかボールペン争いが激化しました。その後、高級化した「ジェットストリームプライム」や、油性ボールペン世界初となるボール径0.28mmの「ジェットストリームエッジ」も発売されました。「クセになる書き味」ジェットストリームシリーズの大人気は、いまだ健在です。

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