官浪の文房具雑学~ぺんてるシャープ芯編~
私たちが日頃使っている0.5mmのシャープ芯は、ぺんてるが世界で初めて作ったものであることをご存知でしょうか。ぺんてるの前身である大日本文具株式会社は、1946年(昭和21年)に絵の具やクレヨンという描画材メーカーとして創業されました。その後、1971年(昭和46年)に「ペンで伝える」という意味の造語で「ぺんてる」と社名変更されました。創業時より、描画材の技術を生かした、新しい製品の開発に取り組んでいたぺんてるは、「人々に求められているが、まだこの世にないものを提供したい」との思いから、シャープペンの芯を作ることになりました。当時のシャープペンは繰り出し式で、芯の太さが1.5mmや1.0mmといった太いものが主流でした。画数の多い漢字を書くことの多い日本では、もっと細い芯が求められていました。「これだ!」とぺんてるの開発陣は動き出しました。当時のシャープ芯は鉛筆の芯と同じように黒鉛と粘土を混ぜて作られていました。この製法であると1.0mmよりも細くすると折れやすいものになってしまう。新たな製法開発の研究を日々繰り返されたが、なかなか課題を解決することができなかったようです。研究が行き詰った時、ある研究者が昼食のおにぎりを誤ってストーブの上に落としてしまいました。その米粒は黒焦げになり、最後は真っ黒な灰と化しました。これを見た研究者は閃きました。鉛筆の芯は黒鉛と粘土を焼いて黒くしているが、多くの物は焼けば黒い灰化していくものだ。黒鉛と粘土以外のものも焼けば黒くなる。さらに研究を重ね、「合成樹脂」を使用することを思いつきました。合成樹脂つまりプラスチックを粘土の代わりに使用し、黒鉛に混ぜていくことにより細くても強度のある芯を作ることに成功。だが、折れにくいものの滑らかさでは劣っていた。そこで、黒鉛と樹脂を焼いた後に100度の油に2時間浸すということに行き着きました。これにより滑らかな書き味のシャープ芯が実現しました。1960年(昭和35年) 世界初となる0.9mmのハイポリマー芯を発売。そして1962年(昭和37年)には0.5mm芯も誕生しました。と同時に回転式より使いやすい世界初のノック式「ぺんてる鉛筆」を発売し、さらに大量生産することにより小中学生でも購入できる価格となり、大ヒットしました。その後のシャープ芯の開発は進み、より強くて滑らかな「アイン替芯シュタイン」などを発売し、多くの方々に使われています。