官浪の文房具雑学~キングファイル編~

オフィスの書庫にずらりと並んだお馴染みの光景ともなっている「キングファイル」。国内シェア1位のファイルの王様ともいえます。1927年 キングジムの創業者・宮本英太郎氏が名簿台帳「人名録」を商品化し、販売を始めたことをきっかけに「名鑑堂」として創業したキングジム。その後は、ファイルやバインダー、電子文具などのトップメーカーとして躍進しています。そのキングジムから1964年(昭和39年) に発売した「KING PIPE FILE」は、日本国内初めてのパイプ式ファイルで、「大量の資料を保管でき、綴じた書類の抜き差しが簡単で便利なファイルを作る」という開発陣の努力によって開発されました。当時は多量の書類を綴じる場合は、書類に千枚通しやスクリューパンチなどで穴を開け、紐を通し厚紙の表紙に綴じるという時代なので、このファイルの誕生で「書類はファイルにとじる」という文化を定着させたともいえます。キングファイルの表紙は、丈夫な芯材にポリプロピレン製の表層材を巻き付け、背見出しカバーを熱溶着して作られています。オフィス以外での工場などの手が汚れた状態で使用する場面でも、汚れがつきにくいように考案されています。また、とじ具の開閉試験などさまざまな耐久試験もクリアし、長期間にわたって書類を保存できるよう品質にこだわって製造されています。そして、白地にカラフルなスクエアマークを施した背表紙は、当時のファイルとしてはかなり斬新なデザインで注目されました。このマークでファイルの中身を系統別に分類することができます。このデザインと機能性が評価され、通商産業省が選定する「グッドデザイン賞」をファイル業界で初の受賞となりました。1975年(昭和50年)には、左右どちらからでもとじ具を開くことができる「ドッチファイル」が発売され、いまではこちらのとじ具が主流となっています。近年は資料や情報をパソコンデータで管理することが増えましたが、重要な書類や文書は紙に出力したものをファイリングする企業や団体も少なくありません。データ管理とファイル管理とをしっかりと使い分けることが大切な情報を守るポイントですね。このスクエアマークのファイルがいつまでもオフィスの定番に君臨されていることを祈っています。



 
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