官浪の文房具雑学~呉竹創業120周年記念編~

墨や筆ペン等のトップメーカーである㈱呉竹が、今年の10月で創業120周年を迎えられました。

1902年に 奈良の伝統産業である墨作りを家業として、綿谷奈良吉氏が㈱呉竹の前身である「綿谷商会」として創業されました。1953年に教育現場の「墨を磨る時間を短くし、節約した時間で授業の内容を充実させたい」という声のもと新製品の開発を始め、1958年に業界初となる書道用液体墨「墨滴」を発売しました。墨滴に続く新規事業への取り組みとして、もう一つの書く分野である筆記具(サインペン)分野の開発に進出。ペン先の研究など2年間にわたり試行錯誤したのち、1963年に水性インキで細字の「クレタケドリームペン」発売し、国内外で大ヒット商品となりました。 しかし、ドルショックで円が切り上げられ輸出産業が大打撃を受け、新たな新商品開発を迫られました。そんな中、世間では芳名録の記帳やのし紙、年賀状などでの筆文字が求められる場面も多かった。そこで㈱呉竹は「筆と墨で文字を書きたいと思っている人は多いはずだ。もっと簡単に筆文字が書ける筆記具があれば売れる」と判断し、この筆記具の開発に社運を賭けました。新商品の開発陣は2年あまり試行錯誤し、ナイロン製の芯の射出成型時にスパイラル状のねじりを加える、ということを思いつき、1973年に、墨づくりの伝統とサインペンの開発技術が融合した画期的な筆記具「くれ竹筆ペン」が誕生しました。以後「くれ竹筆ぺん」は、今や生活の中で定着し、特に冠婚葬祭には欠かせないものになっています。1980年以降は、「くれ竹毛筆ペン」や「くれ竹筆ペン・二本立て」「完美王」などの新アイテムが相次いで発売されました。1981年に万年筆タイプの高級感のある万年毛筆も誕生し、筆と同じ材質のイタチ毛を使った「万年毛筆 夢銀河」シリーズは、軸にこだわった多様多種な商品がラインナップされています。最近では、自分でインクを入れて簡単にペンを作ることができる「からっぽペン」も発売されています。また、万年筆やガラスペン用として、明治の時代に思いを馳せたカラーインク「ink-café 明治のいろ」も大好評です。これからも「手書きの温かさ」「手造りの良さ」を伝えるメーカーとして更なる製品の開発に期待しています。創業120周年おめでとうございます。

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