官浪の文房具雑学~日本理化学工業㈱編~
ホタテの貝殻を原料とした「ダストレスチョーク」やガラスなどにも書き込みができ、簡単に消せる「キットパス」などの製造メーカーである「日本理化学工業」。社員の約7割が知的障がい者が現場で働き、働く幸せを実現した町工場の奇跡を描いた『虹色のチョーク』が、日テレの24時間テレビの中でドラマ化され、大反響となりました。日本理化学工業は昭和12年 東京都大田区にて創業。衛生無害の炭酸カルシウムを原料とした「ダストレスチョーク」を国内で初めて開発し、昭和28年文部省あっせんチョークとして指定されました。ホタテ貝殻配合により、黒板に書いて消す時の粉の飛散が少なく、教育現場ではスタンダートとなっています。昭和33年に商標登録されました。昭和35年に知的障がい者雇用をスタートさせ、日本が誇る優れたチョークが知的障がい者によって作られるようになりました。障がい者雇用を目指したのは、禅寺のお坊さんから「人間の究極の幸せは、一つは愛されること、二つ目は褒められること、三つ目は人の役に立つこと、四つ目は人に必要とされることの4つです。福祉施設で大事に面倒みてもらうことが幸せではなく、働いて役に立つことこそが人間を幸せにするのです」と教わったからでした。(会社HPより引用)。 昭和49年に大山泰弘氏が社長に就任され、大山社長は「健常者が障がい者に寄り添って生きる『共生社会』ではなく、『皆働社会』です」と語り、福祉施設改革による『皆働社会』の実現を経営理念の一つとされました。昭和50年代頃から少子化が進んだことによりチョークの需要が減少し、会社存亡の危機を救うために新製品の開発に取り組み、平成17年に「キットパス」が誕生しました。窓やガラスなどのつるつるしたところに、滑らかに発色良く描け、布で消すことができる商品です。安心・安全な筆記具として、小さな子どもや学校、お店など使い方は広がり、ヒット商品に。平成21年に「ISOT 2009 日本文具大賞機能部門グランプリ」を受賞しました。平成20年に大山隆久氏が社長に就任し、泰久会長の意思を引継ぎ、障がい者雇用に取り組みました。「日本でいちばん大切にしたい会社」(坂本光司著)で紹介されたことにより、「幸せを創造する会社」として、全国から脚光を浴びるようになりました。平成29年に発売された「虹色のチョーク」(小松成美著)を読み、「日本でいちばん大切にしたい会社」に選ばれた理由がよく分かりました。63年もの間、障がい者雇用を続けながら、チョーク業界のトップシェアを成し遂げた日本理化学工業さんの益々のご発展をお祈りいたします。