官浪の文房具雑学~株式会社あかしや編~

筆の歴史は古く、今から約2300年前に秦の時代の中国にて作り始めたと伝えられています。中国から日本に伝わったのは飛鳥時代の初めで、さまざまな中国文化とともに筆も伝来しました。506年に弘法大師が遣唐使として唐から中国製の筆の技術を持ち帰り、大和の坂名井清川という人に伝授して作らせた筆を、嵯峨天皇に献上したことが日本での筆づくりの始まりとされています。1716年 「あかしや章穂堂」として創業された「株式会社あかしや」は伝統工芸品「奈良筆」をはじめ、書道用品や各種筆を製造する創業300年を超える老舗メーカーです。先日、筆づくりを体験するために本社を訪問させていただき、筆の歴史や種類、製作工程などについて勉強させてもらいました。「奈良筆」は日本の筆のルーツでもあります。原材料に鹿、馬、山羊、イタチ、ムササビ、リス、狸など約10種類の動物の毛が使われ、その獣毛をそれぞれの毛の特徴が引き立つように混ぜ合わせ、筆の使用目的に合う筆を作り上げる「練り混ぜ法」という技法で作られています。奈良筆は1977年に、伝統工芸品として通産省の認定を受けました。この練り混ぜの工程は、筆匠による熟練の技術が求められる作業です。原料を厳選して櫛抜き、毛もみ、つめ抜き、先揃え、逆毛抜き、寸切り、平目あわせ、練り混ぜ、芯立て、上毛かけ、おじめ、のり入れ、なぜ、仕上げに至るまでの製作工程を筆匠の手作業によって作られています。その匠の技を生かした高級筆は、書家や専門家に高く評価されています。今回の「筆づくり体験」では、「のり入れ」と「なぜ」の工程を体験することができました。最近では、奈良筆と同じ技術や素材で作られた、水性染料インクが再現する美しい日本の伝統色のカラー筆ペン水彩毛筆「彩」が好評です。描き味にこだわった手作り毛筆で、毛筆タッチを生かして水を穂先に含ませたり、紙をあらかじめ湿らせることで、やわらかな濃淡も表現することができます。水彩画や絵手紙、イラストにと多彩な場面で愛用されています。創業307年を迎えられた「株式会社あかしや」さん。伝統にもとづく「品質本位」の製品づくりで、更なる発展を心よりお祈り申し上げます。

Pocket