官浪の文房具雑学~キャップレス万年筆編~
世界初のキャップのない万年筆は、1963年(昭和38年) パイロットから発売されました。パイロットは、1955年(昭和30年) 「パイロットスーパー万年筆」というモデルを開発し、万年筆の完成形を築いていました。しかし、次の段階に進む時期と判断し、キャップを持たない万年筆の開発に踏み出しました。それまでの万年筆は、書く際にいちいちキャップを外す必要があり、素早く書き始めたいという要望に応える万年筆の開発が課題でした。今までにないキャップのない万年筆の研究は約6年間にわたって続けられ、1963年(昭和38年)に「初代キャップレス」が誕生しました。この時のモデルは、ボディをツイストさせてペン先を繰り出す”繰り出し式”でした。キャップのない代わりにペン先を収納した時には、シャッター機構で気密性を保ち、ワンタッチでスピーディに心地よく書き出せる画期的な万年筆で、大ヒットとなりました。その初代が発売されてからわずか1年後の1964年(昭和39年)に片手で簡単に操作できる「ノック式」を搭載したキャップレス万年筆「C-300SW」が誕生しました。機構的には現在販売されているものと基本的に近いものでした。初代のキャップレスは繰り出し式で、ツイストするとシャッターが斜め手前にスライドする仕組みとなっていたが、このノック式は、ノックを押すとペン先が繰り出し、そのペン先によってシャッターを押し広げる、いわゆるシャッターが倒れて開くという構造のものです。日本では「キャップレス」という商品名で販売されていますが、海外では「バニッシングポイント(Vanishing Point)」という名称で販売されています。Vanishing Point=消失点という意味で、意訳では「消えるペン先」となるそうです。まあ日本ではあまり馴染まない名称ですね。キャップレスは通常の万年筆以上に気を使わなければならないのは”機密性”です。気密性を確保するために、パイロットの研究者は細かな改良を積み重ね、ロングセラー文房具となっています。2005年(平成17年)には、細身軸の「キャップレスデシモ」を発売。そして、2016年(平成18年) には第一号発売以来、支持され続けているという、意味を込めた「キャップレスフェルモ」が誕生。その後も新機構ノック&ツイストなどのバリエーションを増やし続けています。