官浪の文房具雑学~古典インク編~

万年筆のインクといえば染料系のインクが一般的です。しかし、50~60年前までは万年筆のインクといえばブルーブラックのインクでした。古典インク、没食子インクともいわれるものです。乾燥すると光や湿気により退色することもなく、耐水性にも優れていて、保存する文書に最適のインクです。万年筆で書いた文字はブルー色で、紙に染み込むと空気中の酸素と結合して鉄イオンとなる。これがインク成分のタンニンと結合して、酸化が進み、黒い色に変化する。没食子インクと呼ばれているこのインク。没食子とは、ブナ科の木に蜂が産卵して、その刺激により生じた虫こぶのことである。ブルーブラックで利用されるタンニンは没食子酸とも呼ばれ、昔はこの虫こぶから作られていたらしいです。万年筆のインクの種類としては「古典インク」という種類はありませんが、「タンニン酸あるいは没食子酸および鉄イオンを含む万年筆インク」と定義されているそうです。インクの成分は染料インクと没食子+鉄イオンからできていて、酸性インクのため昔の万年筆のニブは鉄なので腐食する可能性があり注意が必要でしたが、近年は腐食しやすい鉄に替わってステンレス合金が使用されているので、腐食することも少なくなりました。古典インクは、半世紀前ころまでは作られていましたが、今では海外のペリカン社のブルーブラックと、日本の万年筆メーカープラチナ万年筆のブルーブラックのみが、酸性の古典インクを販売されているようです。古典インクの話ではありませんが、耐水性と耐光性に優れ、濃く鮮やかな筆跡が残せる、顔料系万年筆インキ「強色(TSUWAIRO)」が、パイロットから発売されています。長期間保存する文書には最適です。もちろんこれは古典インクではありません。また、セーラー萬年筆からは、混色ができる顔料系インク「STORiA Mix」が発売され、自分だけのオリジナルカラーインクが楽しめるということで、好評です。

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