官浪の文房具雑学~肥後守編~

肥後守は、日本で第二次世界大戦前から使われている簡易折りたたみナイフです。明治20年代に現在の三木市平田で永尾駒太郎氏が初めてナイフの製造に着手したとされています。明治27年に金物問屋の重松太三郎氏か鹿児島から持ち帰ったナイフを元に、携帯できるようにチキリを付けて刃と柄を折りたためる構造を考案されました。熊本地域に多くの取引先があったことから、「肥後守ナイフ」として販売されるようになりました。現在では、「肥後守」の商標を使用できるのは、兵庫県三木市にある永尾かね駒製作所のみとなっています。私も子どもの頃にこの肥後守を使って鉛筆を削った記憶があります。肥後守が鉛筆を削るのに最適なのは、刃の背が弧を描くようなカーブ状で、親指がしっかりと固定して削れることです。刃を開いて二つ折り部分にあるチキリ(尾)という突起をしっかり固定して、鉛筆の木軸を刃に当てて、刃を動かすのではなく鉛筆を動かして削るということがポイントです。昭和35年に起きた浅沼日本社会党委員長刺殺事件をきっかけに、「刃物を持たない運動」が進み、子ども達がナイフを持ち歩くことができなくなり、鉛筆削り器が急速に普及しました。電動鉛筆削り器も登場し、大変便利になりましたが、ナイフで鉛筆を削るということが少なくなったことは残念なことですね。一方で、刃物の取り扱い学習のため、生徒に肥後守を使用して鉛筆を削る体験を奨励する小学校もあるようです。皆さんも肥後守で鉛筆を削ってみませんか? 木軸を削る時の何とも言えない感触、木軸であるインセンスシダーの香りを味わうことができますよ。

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