官浪の文房具雑学~印章編~

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、在宅勤務が進みました。書類にハンコを捺すためだけに出社するということで注目が集まったのが「印章」という存在です。印章とは「ハンコ」とも呼ばれるもので、変形しにくい固体でできているものです。勘違いされている方も多いのですが、「印鑑」とはその印章を捺して得られる跡のもので「印影」とも呼ばれています。その印章の歴史は古く、今から約6000年前、メソポタミアから始まったとされています。その後、ヨーロッパに伝えられシルクロードを経て中国や朝鮮に伝わり、日本に伝わりました。日本での歴史は57年に光武帝から下賜された「漢委奴国王」の金印が日本最古の印章とされています。記載内容の真実性を保証する意味で、押印されるようになったは飛鳥時代のことで、ハンコが庶民に広がったのは江戸時代です。そして明治時代には印鑑登録制度が整備され、現代のような印鑑制度が定着していきました。現在で用いられている印章は、市町村などに登録する実印、金融機関に登録する銀行印、家庭や個人でも使う認印、そして手紙や書画などの片隅に捺す落款印などがあります。印章は柘、黒水牛、オランダ水牛、象牙、チタンなどの材質が使われることが多いです。漢字を用いる場合の書体は楷書体、篆書体、隷書体、古印体などさまざまな書体があります。インクをスポンジに染み込ませた浸透印「Xスタンパー」がシヤチハタから発売されていますが、印鑑登録などには使用できません。日本は「ハンコ社会」などといわれ、日本独自の印章文化が社会に根付いていますが、欧米では印章が広く使用された時代もありましたが、19世紀頃から使われなくなり、サイン(署名)が広く使用されています。近年、電子データ化した印影をパソコンの画面上などで書類に捺す電子印鑑が広まりつつありますが、押印への信頼度は依然として高いようです。長年にわたり培われた「ハンコ文化」から、脱ハンコの時代になるのでしょうか?

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